先週、29、30日と伊豆大島に行った。
相方と夏休みが合わず、旧友との約束もあって、
結局、仲間内の予定も合わずに、野郎二人の旅となった。
大学時代の
バイトの仲間。
かれこれもう20年の付き合い。
大島へは、10年前、ボクが番組制作時代に取材で行ったのを最初に、
4年前には、今回一緒に行った友達と一緒に行っていたので、今回は3回目。
竹芝からジェットフォイルで1時間45分。
4、5年前に就航したこれは、
従来の夜行の在来船が一晩掛けるのに対して早くて便利だが、
窓が開くわけでもなく、言うほど快適なワケでもなく、単なる輸送手段というところ。
船中、竹芝で買った弁当を突きながら缶ビールで乾杯、
ケータイGPSで、時々の現在地点を確認して面白がりながら、2時半に到着。
迎えの車で数分で宿へ。
宿、
ホテル白岩。
島の宿事情が本土のそれとは違うのは知っていたが、
島ではそれなりにいい宿のはずも、
ん〜・・・何か30年前にできた
ビジネスホテルがそのまんま、っていう感じで、
いきなりのカウンターパンチを見舞われてクラクラする(苦笑)
今回の旅は、ヤフートラベルで船と宿の
セットで割安で取れた一方、
普段はそれなりに調べて指定する部屋タイプなどは一切お任せだったが、
もう少しマシな部屋もあったようだから、不作為に舌打ちする。
いつものこういう旅ならまずは部屋でゴロ寝になるのだが、
落ち着かないので、早速、ロビーで割引券を買って、船が着いた元町港近く、
歩いて15分ほどの『御神火温泉』に出掛ける。

ここは海沿いにあって、比較的最近できたらしい、
スパとプールっていう趣のところで、僕らは早速温泉に入る。
露天ではないが、大窓からは目の前に海が見え、入り込む陽差しが暑い。
ゆっくりしようと思ったが、サウナも含めて20分ほどで茹で上がって退散。
プールは予想外に25メートル3レーンの「ちゃんとした」やつで、
地元の子相手のスイミングスクールをやっていたから、僕らはもちろんパス。
プール横、ロビーにあるレストランで、時間潰しがてら生ビールを頼んで、
ガラス越しにプールの健康的な
子供達と、その先の西日を眺めつつ。
外に出て、隣の公園へ。
夕陽好きを公言する友達のリクエストで、
公園隣にある公衆露天風呂『浜の湯』で入り日を観ることにしていたが、
水平線に拡がる雲に、完璧なシチュエーションは難しそうなのが分かって、
御神火温泉で火照ってもいたので、浜の湯はパスとなる。

「どうせ夕飯もそれなりだろうし、部屋にいても落ち着かないし、
食後に呑みに行くところを探そう」
と、宿に戻りがてら、港の周りを巡ってみる。
スナックが数軒と居酒屋みたいなのが数軒。
どれもどんなんだか、と言う感じだったが、一つだけ、
アリかな、っていうところが目につく。

むしろ2階の『日本テレビ大島支局』っていう看板が
秘密基地っぽい佇まいで面白くて
写真を撮ってみた。
宿に帰って夕食。
部屋食など期待できる風でもなく、食堂へ。

前に来た時にも食べたことのある椿油のフォンデュは美味しかった。
説明がなかったが、前回そうであったように、皿に敷かれていた明日葉を、
そのまま衣につけて揚げて食べた。
タラの芽っぽい苦みがあってこれもオッケーだが、
葉っぱがちょっと茶色くなっていて苦笑い。
その他、そこそこだったけれど、食堂がこれまた時代がかった雰囲気で、
狙ったはずもない薄暗さが、せっかくの料理の魅力を殺いでいる様に思った。
部屋に戻ってテレビをつけると、本土は豪雨だったようで驚いた。
島は曇りがちで雨もパラつきはしたが、陽も差して夏らしく、
雨から逃げて散歩が出来たのは何よりだった。
食後、かなり満腹だったが、外に出る。
結局、連れの希望もあって、先ほど見た店『肴や』へ。
入るとすぐのカウンターに通される。
都内にもありそうな、普通に小洒落た感じだが、嫌みがない。
カウンターと言ってもテーブルみたいなもので、向かいには、
日焼けと酒でか赤黒く光る顔、ごっつい身体にスキンヘッド、
捻り鉢巻き、カールおじさんみたいなヒゲと、
絵に描いた様な島のオジサンが座っている。
オジサン、おやっさんとかっていう言葉が似合いそうな。
メニューを眺めてちょっと考えていると、おやっさんから声が掛かる。
「何を呑もうかな、っていうんだったら、無難なところで『盛若』がオススメだよ。水割りがいい」
せっかくなのでその地元の焼酎らしい『盛若』を頼む。
隣の奴は「すみませんねぇ」と言いながらレモンサワー、おやっさんは、
「まぁ、それもいいわな」と笑う。
腹も減っていないので刺身か何かと思い、
連れと相談して『たかべ』の刺身を頼むと、「分かってるねぇ」と、
間髪入れずおやっさん。
たかべは高級魚で小さくてあしがが早いから、
東京などでは高級料亭でしか出されないそうだが、
島では獲れたてが食べられるとのこと。
続けて『鯨の唐揚げ』を勧められ、
空気を読まない連れが「
小学校の時の濃い味付けの固いやつっていう印象」というと、
「んなこと言ったら大将が泣いちゃうよぉ!そんなのとは絶対に違うから。
渋谷の『鯨や』って知ってる?、あそこで出された鯨なんて喰えたもんじゃねぇ、あそこで出されるのは歯鯨のやつで、旨いのは髭鯨。
ここのは間違いないよ」
と、火がつかんばかりのオススメだったし、
『鯨や』の意見には大いに頷けたので、頼んでみる。
たかべ、絶品!
鯨の唐揚げ、柔らかくて味が染み出してこれまたかなりの高レベル。
刺身の醤油に島の唐辛子の尻尾のところが入っているのが新しかった。
おやっさん曰く、「1、2回だけ箸先でちょんちょんって突くんだよ、
3回やっちゃうと辛すぎるから、2回まで」とのこと。
刺身の味が締まって旨かった。
最初は、どうしようかと思ったおやっさんとの話も、
屈託なく、押しつけがましくもなく、人の良さが伝わってきたので、
すっかりと意気投合。
他のお客さんが帰り、僕らだけになると、話には大将も加わる。
最初はおっかなそうだと思った大将も、ピエール瀧を思わせる顔立ちに、
人なつっこい笑みが浮かぶ。
満腹のはずも『いさき』『さんま』と刺身を追加。
脂が乗りきってとろけるさんまにも驚かされた。
お世辞じゃなく、これまで食べたさんまで一番旨かった。
おやっさんは、さかんに大将を褒めちぎる。
「この人は職人だからさ。島で旨いもの出す店は3つぐらいだけど、ここは間違いなくそのうちの一つだよ。値段も良心的だし、何喰っても絶対に間違いがない」
いや、そう思った。
お通しで出されたジャガイモの炊き出しも美味しかった。
ジャガイモに挽肉、それに刻んだ生のピーマン、派手さはないけれど、
こんな食べ方があるんだと思った。
大将は、新宿・河田町の旧フジテレビ近くで店をやっていたらしい。
ボクが10年前にテレビの取材で大島に来た事を話すと、
おやっさんも含めて、「テレビってのはヤクザだよな」とかの話で笑う。
ところで、ボクの10年前の取材時には小さな番組で
観光協会に相手にされずに、
居直ってゲリラ的な取材をしたことを話したが、
後々考えると、おやっさんは、どうも観光協会の関係の人だったのかも・・・苦笑
話は、島の道端でサルやキョン(鹿の一種)を見かけたことがあるか、という話から、
何故だかいつの間にか、一番強い動物は何か、と言う話になり、
大将は熊には勝てないだろうと言い、おやっさんは像の方が桁外れだと被せ、
僕らはその怪気炎のバトルを面白がった。
まぁ、とにかく、思わぬ魅力を見つけられた『肴や』での邂逅だった。
「いっつも同じ顔ぶれで同じ話をしてる俺達にとっちゃ、たまに東京からでも人が来てくれて、旨いものを紹介して喜んで貰ったり、いろんな話ができれば、それが一番なんだよ」
というおやっさんと大将の気持ちが嬉しかった。
「大島に行くって言うと『何しに?』って言われる事があるんですけど、『大島にちょこっと旨い魚を喰いに行ってくるよ』って言うのは、最高にカッコイイんじゃないかと思いました」
ボクは答辞代わりに思ったことを言った。
10時の閉店過ぎまでお世話になって、再開を約束して店を出た。
会計は7千円ちょっと。
確かに良心的な値段だったなぁ。
宿に帰り、露天風呂に行く。
『風呂が自慢』というだけあって、全体の草臥れ加減とは別に、
ここは綺麗で快適で満足。
こうして一日目を終えた。