2005年10月23日

無我霧中。その弐

7回、僕たちの頭上にある屋根越しに、一塁側からグラウンドに白い煙が流れてくる。

 毒ガスですかね?

連れが言う。

 だったらここで死んでもいいよ(笑)。

ボクが応える。

煙は徐々にグラウンド全体に満ち、カクテル光線に照らされて幻想的な景色を創る。
ボクの夢心地は、一層加速する。

幕張のカモメには、霧なんて気にならないらしい。
ヒットが重なり、合間には、里崎、ベニーのホームラン。
ほとんど見えなかったが、むしろ印象的だった。

霧が濃くなる。
対角線上にあるバックスクリーンは完全に消え、電光だけが浮かんでいる。

試合が中断する。
タイガースファンには感心した。
ひたすら応援のコールを止めない。
そして、ボクの左側、50メートルぐらいのところにいるタイガースファンの一群が、
ウェーブを始める。
最初は誰も相手にしない。
一人がマリーンズ側へも来て、熱心にけしかける。
徐々にウェーブは繋がり出す。

二階から始まった波は、3塁側を渡り、レフトのタイガースファンに繋がる。
そして何度かの後、バックスクリーンを挟んで死角にあるはずのマリーンズファンに届き、
三塁側からは拍手と歓声が上がる。
一塁側の奥からは、一階も巻き込んで二層になりながら、周り出す。
後で知ったのだが、バックスクリーンを跨ぐ時には、裏の通路に両チームのファンが並んで、
合図を受け渡していたらしい。

何故かウェーブを待ち受ける時にコールが上がる。

 オィッ、オィッ、オィッ、オィッ、オィッ、オィッ、

10周近くしただろうか。
バックスクリーンを跨ぐたびに歓声が大きくなる。
両チームのファンが一つになって、試合を待っている。
マリーンズの選手も、ダッグアウトからスタンドを見上げ、
自分達のところへ来ると、一緒になって両手を挙げる。

霧の中の邂逅。

しかし、審判団がグラウンドに出ると、全体がそれを注視し、
主審が、ホームベース上に立つと、溜息が上がる。
主審はバックネットに向いて、右手を差し上げる。

試合終了。

それまで一つになっていたスタンドは、明暗がくっきりと分かれる。

僕たちは、あらん限りの声で、マリーンズの応援歌を唱う。

スタンドを後に階段を下りていると、どこからか歌声が聞こえ出し、
一気にそれは飛び火して、また合唱になる。

 俺達の〜誇り〜千葉マリーンズ〜♪

 もの凄く引火しやすくなってるよね。
 阪神ファンなら普通なのかも知れないけどね。

連れと笑い合う。

スタジアムを出て、帰途への列に入りつつ、後ろを振り返る。
マリンスタジアムが霧の中に沈み、カクテル光線が滲んでいる。
映画に出てくる巨大な宇宙船みたいだと思った。
自分がさっきまであそこに居たんだと思うと、そこを去ってしまう事がためらわれた。


バスで幕張本郷に行き、津田沼へ出る。
電車の中で、タイガースの応援団のオッサン達の一団と呉越同舟になる。
僕たちは、いつもはスタジアムを出るとユニフォームを脱いでしまうが、
この日ばかりは、連れと揃ってユニフォーム姿だ。
一触即発かと思いきや、彼らが随分とヘコんでいる。

 あかんわ。
 井口(ホワイトソックス)連れてくるわ。

まだ一試合終わっただけなのに、意外と大人しい人たちなんだな。

津田沼では、終電を気にしつつ、連れと祝杯をあげに、駅前の居酒屋に行く。
相変わらずユニフォーム姿だ。

 おめでとう!やったね!

駅前を歩く僕たちに声が掛かる。
僕たちは、手を挙げ、それに応える。

居酒屋では、通された席に愕然とする。

席中、白いユニフォームのマリーンズファン。
チェーン店なのに、大型テレビで中継をやっていたらしい。
そこに、次々と試合帰りのファンが加わり、
ボクが幼い頃、川崎でファンクラブに入っていたと言うと、
川崎時代を知るコアなファンに捕まってしまい、
いつの間にか終電も忘れて盛り上がり、夜が更けた。

こんな日が来たんだ、としみじみ思う。
ニックネーム パラマリボ at 19:08| Comment(0) | TrackBack(0) | Beisbol
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